COMIC in the '80s 東京ガールズブラボー
80年代をやっとまじめに批評の対象にしてくれたのは宮沢章夫さん・・・というのが先週のblogでしたが、良く思い出してみるとこの本もありました。連載が1990年開始ですから、まだ80年代の余波を受けながら時代はバブル真っ最中。この時代によくここまで80年代を相対化(チャカしつつ愛)した漫画が描けたね。やっぱりあなたは天才です、と、絶賛したくなる岡崎京子先生の「東京ガールズブラボー」。当時の軽~く、そしてその軽さゆえに過激に進行していくサブカルの状況がよく表現されている。
主人公・サカエは、「きっとみんなナウナウでプラスチックにオシャレにキメキメ」に暮らしているという大きな期待を胸にテクノポリス・TOKYOに引っ越してくる。しかし、当然、東京にはフツーに所帯じみた日常もあるのだ。サカエはそれを許容出来ず、どんどん家族や学校と距離を取りサブカル・ニューウェーブの世界にのめり込んでいく。そして、その過激なスタイルゆえにクラスメイトの好奇の対象となり、あこがれの対象となり、嫉妬の対象となり、攻撃にもさらされる。その一方で、サブカルギョーカイや、ミーハー少女たちに、違和感を持ったり、失望したり、たまにちょっとだけ反省したりもする。
岡崎京子は、俗っぽいトレンドとかコマーシャリズムとか、もっと言うと大衆消費社会とか、高度資本主義とか、を楽しみながら、それらと一定の距離を保つ批評精神あふれた漫画家。
ここに描かれている、「豊かになり始め、選択の自由が保障され始めた80年代初頭のニッポン」に存在した、「一定の趣味・こだわりや価値観を共有する人々の連帯と競争(当時のそういった連帯の象徴的な場は"クラブ"だった。)」は、現在、匿名性・排他性をまといながら、AKB劇場で、ハロウィンの渋谷で、炎上するネットで、更に過激に進行している。
2016年という現在、あらためてこの本を読むと、『東京大学「80年代地下文化論」講義 決定版』とは視点は違うけど、この時代にはじまったことが現在進行形で今も続いていることを考えさせられる。
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